読売新聞が、大きく変化する東京の劇場事情についてまとめています。新宿靖国通り沿いの
シアタートップス(1985年開場)は来年3月末で閉館。新宿歌舞伎町の新宿コマ劇場(1956年開場)とシアターアプル(1983年開場)は再開発のため今年12月末日をもって閉館
(新宿コマ東宝劇場・シアターアプル 閉館のお知らせ)。大森の繊維工場を改装したベニサンピット(1985年開場)は来年1月25日をもって閉館(
お知らせ)。うちベニサンピットではオーナーの意向で取り壊し、売却が決まっているそうですが関係者は存続を求めているとあります。
変わる劇場地図
読売新聞:2008.11.21
数々の名舞台を生んだ小劇場が姿を消す一方、ユニークな公共劇場が、また一つ生まれる。新宿では3館が閉館するなど、東京都内の劇場地図は様変わりしつつある。(多葉田聡)

新宿(閉館)
シアタートップス 質を重視した「名館」
1985年、新宿の雑居ビルに開場した客席数150の小劇場「シアタートップス」。ビル所有会社の経営判断で来年3月末で閉館される。
劇団☆新感線、大人計画、東京サンシャインボーイズなどの人気劇団が公演してきた、小劇場界のあこがれの場所。解散したカクスコや、ラッパ屋など20年近く本拠地としてきた劇団もあった。菊池摩美・支配人代理は「質を保つため、舞台やその映像を見て選ばせていただいた」と話す。何度か断られた後、ようやく公演が実現した劇団も多い。
「使い勝手は良くないが、濃密な空間での芝居作りにこだわる劇団に使っていただいた」と菊池支配人代理。来年3月、ゆかりの劇団や演劇人を集め、さよならイベントを開く予定だ。
「新宿コマ劇場」と併設の「シアターアプル」も年末で閉館。演劇文化の一つの中心が大きく変わろうとしている。

高円寺・中野(開館)
座・高円寺 固定客確保へ回数券制
杉並区が来年5月、高円寺にオープンする「座・高円寺」は、劇作家を中心にした非営利組織(NPO)が指定管理者となり、ユニークな運営方針を掲げる。
主催・提携公演を割安で見られる回数券を発売。固定客を育てるほか、劇場スタッフらを育成する学校も開設する。劇場内のカフェに絵本500冊をそろえ、子供も気軽に立ち寄れるようにする。
佐藤信(まこと)・芸術監督は「絵本の読み聞かせなど芝居以外のこともやりたい。回数券制度は、公共劇場への助成を直接、目に見える形で還元するため」と話す。
自前で制作する舞台は年1本程度。それ以外は他の劇場で上演された秀作を再演する。「どういう作品を取り上げるかで個性は出せる」と佐藤芸術監督。こけら落としは、井上ひさし作、渡辺美佐子主演の一人芝居「化粧 二幕」の再演だ。
JR中央線沿線では、中野の「ザ・ポケット」「劇場MOMO」隣にも来年10月、新劇場「テアトルBONBON」「劇場HOPE」が開場予定。四つの小劇場が集まる拠点が誕生する。

森下(閉館)
ベニサン・ピット 外国人も愛した空間
染色工場だった建物を再利用した森下の小劇場「ベニサン・ピット」も来年1月末で閉館予定だ。ボイラー室部分を改装し、85年にオープン。舞台や約170の客席を自由に配置できる空間から多くの名作が生まれた。
映画監督のアンジェイ・ワイダが歌舞伎の坂東玉三郎主演の「ナスターシャ」を上演し、演出家のデビッド・ルボーが多くの舞台を手がけるなど、外国人にも愛された。瀬戸雅壽(まさとし)支配人は「空きスペースを貸したのがきっかけで、83年、けいこ場を始めた。その後、実験的な劇場にできないかと言われ、手探りでやって来た」と振り返る。
建物の老朽化に繊維業の不況が重なり、七つのけいこ場と共に取り壊し、売却することが決まった。ただ、同劇場を拠点にしてきたTPTなどは「世界の演劇人に愛されている稀有(けう)な小劇場」が果たした役割を振り返り、継承していくため、もうしばらく閉鎖を延期するよう求めていく方針だ。
「発信地」池袋、赤坂にも 評論家の小田島雄志氏
演劇評論家の小田島雄志氏に、閉館する劇場の思い出などについて聞いた。
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「ベニサン・ピット」は舞台と客席が一つになれる大好きな小屋。隣のけいこ場をのぞいたり、近くのそば屋で役者に会ったり、芝居漬けになれる演劇人交流の場だった。
新宿の「紀伊国屋ホール」や下北沢の「本多劇場」が新劇界の横綱だとしたら、「シアタートップス」と下北沢の「ザ・スズナリ」は小結くらい。スズナリの芝居はくだけているが、「トップス」はしゃれた都会の喜劇が似合った。東京サンシャインボーイズ時代の三谷幸喜やラッパ屋の鈴木聡のような作家が育ちやすい空気があった。一番印象深いのは解散したカクスコ。あの空間に男性6人が寄り添い、歌う姿を思い出す。
「新宿コマ」「シアターアプル」に続き、「トップス」までなくなるのは寂しい。小劇場は続々と出来ているが、“新宿発”で何かが始まる感じはなくなってきた。代わりに池袋や赤坂などに拠点が拡散してきた。
劇場が増えるのは良いことだが、見られない芝居も多い。劇場同士がネットワークを組み、評判の芝居を早く再演してくれれば、観客も、芝居を作る側も助かる。