大阪府営住宅の再開発について |
大阪府営住宅の再開発、名乗り相次ぐ——長谷工やフジ住宅など、高層化→余剰地買いマンションに
日経ネット関西版 2007/09/26配信
長谷工コーポレーションなどデベロッパー各社が、建て替えの決まった大阪府営住宅の再開発事業に相次ぎ乗り出している。高層化を請け負い、余った土地を府から購入してマンションを建てる方式で、大阪は全国の先進事例となっている。住宅開発が進んだ大阪では土地の取得が難しくなっており、府営住宅など立地の良い敷地の再開発に取り組むことでマンション適地を確保する。
長谷工コーポは10月から府営苅田住宅(大阪市住吉区、248戸)を建て替える。戸数を変えずに既存の4階建て主体の6棟から9階建て主体の5棟に中層化して集約。余剰となる6100平方メートルの敷地に近畿圏でマンション分譲を手掛けるダイドーサービス(兵庫県西宮市、塩口正之社長)と共同で、8階建て2棟で143戸の分譲マンションを建設する。
建て替え事業には府が民間企業の資金や手法を導入して進める府営の賃貸住宅の再整備事業の枠組みを活用。長谷工コーポが建て替え、入居者移転、余剰地活用などをセットで手掛ける。
フジ住宅などは2008年4月をめどに府営岸和田下池田住宅(大阪府岸和田市、221戸)の建て替え工事に着手する。移転支援などを含めた建て替え費用は約35億円だが、フジ住宅が約8600平方メートルの建て替えに伴い発生する余剰地を約6億円で購入するため、府の費用負担を軽減できる。一方、フジ住宅は余剰地に61戸の分譲住宅を整備し、19億円の売上高を見込む。
大阪・上本町に37階建ての高層分譲マンションなどを建設する近鉄不動産も同様の枠組みを活用した。府営筆ケ崎住宅(大阪市天王寺区、172戸)の建て替えに伴い、1万平方メートルの敷地のほぼ半分を余剰地として捻出(ねんしゅつ)、2月に33億4000万円で取得した。「近鉄・上本町駅や大病院まで徒歩2分と近く、マンション立地として希少性が高かった」(マンション事業本部)という。
住宅公社が過去に分譲した団地から余剰地を確保する取り組みも動き出した。積水ハウスは長谷工コーポと共同で08年1月以降に兵庫県住宅協会(現兵庫県住宅供給公社)が分譲した住吉南住宅(神戸市東灘区、18戸)、09年度中をめどに大阪府住宅供給公社が分譲した東丘住宅(大阪府豊中市、152戸)の建て替えに着手する計画。建て替えにより増えた分の住戸を分譲することで収益を確保する。
大阪府下や阪神間では中心市街地での高層マンションの開発ラッシュで土地の値ごろ感が薄れている。一方、府営住宅などは市街地近郊の好立地にあるものもあり、今後も不動産関係者の注目を集めそうだ。
大阪府ではPFIによる公営住宅の再開発を進めており、大阪府営住宅の公式ホームページでその進捗状況を確認することができます。
1999年にPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の設備等の促進に関する法律)が施工されてから数年間はまだ官民双方の理解が乏しく、民間企業側が過度のリスクを負うことがしばしばでした。また、それゆえ他の事業へリスク移転可能な大手企業しか参加することができない状況でした。典型的な事例が地震で屋根が落ちた仙台のスポーツ施設で地震によるリスクの分析と事故の際の責任の所在が不明確だったわけですが、私は公共工事の削減を背景にどうしても仕事が欲しい事業者が無理無理に安値受注して欠陥工事を行ったのが原因なのではないかと考えています。PFIに参加しても民間のメリットが薄い状況だったわけです。
大阪府公営住宅の場合は余剰地の売却と立替費用に充てており、民間には余剰地の開発という大きなメリットがあります。全国の先験的な事例といえそうですが、好立地に公営住宅を備えなおかつ住宅ニーズのある所でないと難しいのが現実ではないでしょうか。今後もPFI手法は発展し建物のみならず土木事業まで展開すべきではありますが、公共機関がいかに市況を掴んでいるか、あるいは優れたアドバイザーを使っているかというところに要点ではないか、と浅学ながら考えております。