都城市民会館、解体へ |
「現代建築の傑作」解体へ 都城市民会館 国際組織「保存を」 市「老朽化進んだ」
西日本新聞:2007/09/28
奇抜なデザインに魅力があるとして、国際的な学術組織や市民団体などから保存を求める声が上がっていた宮崎県都城市民会館の解体費約2億5130万円を盛り込んだ都城市の本年度一般会計補正予算が、27日の市議会で可決され、成立した。同市は来年1月にも解体工事に入る。
1966年に開館した同市民会館は、九州国立博物館(福岡県太宰府市)や福岡市庁舎なども手がけた建築家の菊竹清訓氏が設計。屋根の外へ梁(はり)が放射線状に突き出たような外観が特徴的で、生物が息づくような印象を与えるメタボリズム(新陳代謝)建築の傑作と評価されている。
今年4月には近代建築保護に取り組む国際的な学術組織「DOCOMOMO」(本部・パリ)の日本支部が、日本の現代建築を代表するとして「2006年度選定建築物10選」に選んでいた。
しかし、都城市は「老朽化が進み、代わりに市総合文化ホールが昨年10月に開館し、その役割を終えた。市民アンケートでも解体支持が多かった」として、2月に打ち出した解体方針を変えず、市議会に補正予算を提案。賛成多数で可決された。
都城市の公式サイトに「市民会館の今後の方策について」として活用検討の経緯が掲載されています。平成17年末の最終報告書を見てみましょう。少し読んでみると、やはりというべきか、調査報告書はあまりに酷い内容でした。まず記事中にもあるアンケート結果ですが「現状のまま存続26.9%」「大規模な改修後、活用25.5%」「解体47.6%」。というわけで、解体派のほうが少数です。果たしてまともな調査だったのでしょうか。やや怒りを覚えたので一部を乱暴に要約します。
懇話会・市民等からの意見の検証
(1)現状のまま存続について
・菊竹作品であることについて→建設当初から雨漏りが大変だったし、そもメタボリズムの建物は更新されて当然
・文化財として保存できるか→検討可能であるが、メタボリズムの考え方は後世にそのまま残すという文化財の考え方にそぐわない
・日本、世界での評価→知名度は世界的な物だが、ポンビドーのコレクションに入っているわけでもないし「日本の公共建築100選」にも入っていない
(2)利用の可能性について
・更新について→観光資源としての活用可能性もあるが、市民会館をホールとして使うには不都合
・保存について→外観を損ねず残すには屋根を膜で覆う等、相当な支出が予想される
・長期使用の可能性→耐震設計にするには相当の費用が必要で、保存したとしても使用について制限が多い
…というようなレベルです。建物を残すという前提ではほとんど議論してないに等しい。
そのうえ解体費用に2.5億円とは。報告書では改修した場合の費用を2.1億〜3.0億円と見積もっており、解体と同等の費用がかかります。なお、菊竹事務所にも改修の見積もりを出しており、その際の改修費用は13.2億円とのこと。菊竹事務所も菊竹事務所で、まったく都城市の状況を考えていないのも問題ですが、報告書のいう跡地利用がなんと「芝生公園」だそうで、呆れて物が言えません。ならば放っておいて「現代彫刻です」としても良いではありませんか。これは当然、皮肉ですが。
委員会に少しでもやる気が有れば、全国の先験的な事例を調べることもできたはずです。東京都が日比谷公園の文化財の活用にあたり事業者を募集し、ワタベウェディングが改修費用を負担して結婚式場とした事例を御存知ですか?勿論、結婚式場などは一例にすぎませんが、歴史性のある建物を利活用したい民間企業も少なからずいるのです。
まず調査委員会にして頂きたかったのは、建物の価値を正統に評価していただき、存続させたいという市民の声に応えてきちんと存続可能性を検討することです。市民会館として行政が残す能力がないのであれば、運営を民間に委ねることも検討すべきです。
人口17万人しかいない都城市で年間10万人もの利用者のある「生きられた建築」を壊すには、それ相応の検討が必要だと思います。調査は非常に恣意的であり、そして国際的に異議を訴えなければいけません。まずは東国原知事に現地視察を行っていただき全国にこの暴挙を訴えて頂きたいところです。
…また、最後になりますが、DOCOMOMO JAPANの兼松絃一郎氏がブログで保存を訴えておられます。非常に熱い思いと解体の理不尽さを語っておられますので、是非ご覧下さい。
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