北京の直訴村が強制撤去 |
北京「直訴村」近く強制撤去 五輪再開発に伴い 「訴え封じ」陳情者ら反発
西日本新聞:2007/09/25
官僚の腐敗や公安の横暴、司法の不正などを中央政府に訴える陳情者らが住む北京市豊台区の簡易宿舎群、通称「直訴村」の中心部が19日、政府当局が定めた引っ越し期限を迎えた。来年8月の北京五輪に向けた再開発で、近く強制撤去が始まる見通しだ。だが、直訴村で生活する陳情者らは「五輪より人権擁護や腐敗撲滅が必要だ」と反発。陳情者以外の一般住民も数千人が引っ越し先のあてもないまま生活を続けており、強制収用に伴う混乱は必至だ。 (北京・傍示文昭)
■受付所隣接
直訴村は、中国語で「上訪村」。地方から中央政府への上訪(直訴)に訪れる人々が多数集まり、寝泊まりするようになったことから、こう呼ばれるようになった。近くに最高人民法院(最高裁)や全国人民代表大会(全人代)の陳情受付所があり、今も2000‐3000人とみられる農民らが野宿したり、1泊数元(1元約15.3円)の簡易宿舎で生活したりしながら陳情を繰り返している。
この一帯の再開発構想が策定され、周辺整備が始まったのは2005年。近くにある北京南駅がアジア最大規模の巨大ターミナルに建て替えられることになったためだ。
新駅は13のプラットホームを持ち、北京‐上海間の高速鉄道などの発着駅となる計画で、15年には年間旅客数が1億5000万人を超える見込み。周辺地域も大規模整備の対象となり、直訴村の住民には立ち退き勧告が出されていた。
■16年の苦悩
立ち退きの期限だった19日正午を過ぎても、直訴村は表向き平穏を保っていた。当局の担当者とみられる男性数人が立ち退きを求めるチラシを各家に投げ入れていたが、取り壊しのための重機や作業員の姿はなく、一般住民の生活は日常のまま。最高人民法院の陳情受付所の前でも、いつものように農民らが座り込んで受け付けの順番を待っていた。
「再開発を旗印に私たちを排除し、訴えを封じようとしている」。路上のバラックで生活しながら陳情を続ける王次姐さん(64)は、首からぶら下げた直訴状を指さしながら怒りをぶちまけた。
王さんは河南省洛陽市の出身。1990年に一家7人で同市郊外にある金鉱山に移り住み、金の掘り出し作業に従事していたが、翌91年1月に長男=当時(20)=が鉱山主の自宅から金280グラムを盗んだとの疑いをかけられた。長男は容疑を否認したが、鉱山主と警察官による拷問を受け、2日間殴られ続けた揚げ句に死亡。長男の遺体は見せしめのため、20日間も近くの川に放置されたという。
王さんは鉱山主と警察官の処罰を求めて奔走。数年に渡る陳情が実り、2人は殺人罪で起訴され、98年に河南省高級人民法院(高裁)で鉱山主は死刑、警察官は無期懲役が確定した。だが、なぜか2人はその後、釈放されたという。
「カネを払って釈放されたと聞いた。このままでは息子が浮かばれない。司法の不正を暴いてほしい」。王さんは涙ながらに窮状を訴え続けているが、バラックの撤収と出身地への送還は時間の問題とみられている。
■監視強化へ
北京市では10月15日、5年に一度開かれる共産党大会が開幕する。公安当局は党大会を前に民主活動家らの監視を強化。陳情者によると、北京五輪開催を1年後に控えた8月には多数の陳情者が拘束され、労働教育所などへ移送されるか、地方に送り返されており、直訴村の住民も党大会前に排除されるとの見方が強まっているという。
また、中国人民民主化運動情報センター(本部・香港)によると、共産党政法委員会は各地の政法委に指示を出し、定期的に北京を訪れている陳情者約10万人を監視し、北京入りを事前に阻止するよう命じたという。
「再開発に伴う強制撤去は、陳情者を排除する絶好の機会。もう会えないかもしれないが、直訴村の解体を最後まで見届けてほしい」。王さんの陳情仲間で海南省出身の女性(46)は、拘束が近いことを予感しながら、最後まで訴え続ける覚悟を口にした。
こういった記事をみるとどうしても東京五輪前後の日本で、水俣病患者がチッソの前で寝泊まりしていた図やら山谷やらを想起してしまうのです。先進国化を急速に進めていく中央政府と、地方や低所得者との差が明確にあらわれてしまう部分が当然あるのでしょう。
例えば、僕が関心を寄せる50〜70年代の日本の建築が出来上がってきた頃にも、同じく苦しんでいた人達がいたであろうと想像します。いくら出来上がった建物が格好良かろうと、工事の途中で擁壁が崩れたり上から鉄骨が落ちたりして死ぬ人はいまだにいるわけです。用地取得のために地上げされ、行き場を失う人はいるわけです。都市はそういう犠牲の上に成り立っています。それが「良い・悪い」ではなく、だから、人々が幸せな生活を営むための都市を築く必要があるのだと思います。
ちょっと話がわき道にそれましたが、不動産景気に湧く中国の状況も本ブログでは注目していきたいと思います。