仙台市は再開発地区の移転先として、農水省の所有する倉庫を宅地化する計画を立てているそうです。取り壊される仙台政府倉庫は1936(昭和11)年築のもので、老朽化が進むものの、歴史的な建物の解体を惜しむ声もあるようです。
移転先「政府倉庫」敷地に決定 仙台・追廻住宅
河北新報:2008年2月7日
仙台市は、青葉区川内の追廻地区住民の集団移転先として、宮城野区新田の東北農政局宮城野庁舎に隣接する「仙台政府倉庫」敷地を取得、倉庫を取り壊して市営住宅を建設する方針を6日までに固めた。2008年度に事業着手し、長年の懸案である追廻住宅移転問題の全面解決を目指すが、一部の住民は立ち退きに同意していない。さらに、戦前に建てられた歴史的建築物の倉庫解体を惜しむ声も出ている。
計画では、農水省が所有する倉庫の敷地(約1万1000平方メートル)に、4—5階建ての集合住宅1棟(40戸)を建設。一戸建て住宅用に、12区画(1区画120平方メートル)を造成する。倉庫の解体費用も含め、約7億7000万円の総工費を見込んでいる。
一戸建て用の敷地は、市がいったん国から購入して取得希望者に譲渡。それ以外の土地は国から無償譲渡を受ける予定で、年度内に正式に決まる見通し。市は今年5月ごろに倉庫の解体工事を始め、10年3月ごろの完成、入居を目指す。
集団移転の対象者は約100人。市によると、集合住宅には37世帯が入居を希望し、11世帯が宅地の購入を予定している。市は敷地内に集会所や公園のほか、「新田児童館」(仮称)も併せて整備する。
追廻住宅は1946年、戦災被災者向けに国が建設。97年、一帯に青葉山公園整備計画が策定され、立ち退きを求める国・市と住民の対立が続いてきた。
市は2005年10月、新田地区を最終的な移転候補地として提示し、地元町内会が06年5月の総会で集団移転を決めた。同年9月に国との借地契約が期限切れになったが、11区画分の立ち退き同意がいまだ得られておらず、市は具体的な移転先の整備で問題の解決を目指す方針だ。
仙台政府倉庫は1936(昭和11)年、市が建設し、4年後に土地と建物を国に寄付した。低温と常温の倉庫が計6棟あり、政府米などを備蓄・保管してきた。木造平屋で、三角屋根の外観が特徴。老朽化のため2005年3月に業務を停止した。
歴史、建築上の両面から価値を見直す動きがある政府倉庫の活用策としては、90年に廃止された秋田市の政府倉庫が秋田公立美術工芸短大のアトリエに再利用されている例がある。
仙台郷土研究会の吉岡一男副会長は「昭和の建築遺産をすべて取り壊すのは残念。数棟でも残し、資料館などとして活用できないか」と話している。