大阪市阿倍野の「美章園温泉」が解体されるそうです。昨年末の三ノ輪の廿世紀温泉の廃業に続いて、大正モダンの香りを残す銭湯の廃業のニュースで非常に残念です。昨今の原油高などもあり、銭湯をめぐる経済的な状況が苦しいのは理解できますが、それぞれの地域に根ざした建築物としてなんとか保護/活用の道はないものでしょうか。
ミヤコ蝶々さんも通った…「大阪最古の銭湯」解体へ
MSN産経ニュース:2008.2.16 13:20
昭和初期のレトロ銭湯、美章園温泉 大阪・阿倍野
昭和初期に建てられた洋風建築で、現存する銭湯としても最古の部類に入る大阪市阿倍野区の「美章園温泉」が解体される。当時の流行だったアール・デコなどをデザインに採用したり、2階にダンスフロアを設けるなど、戦前は最先端の洋風モダンな社交場としても繁栄。市民や近代建築の専門家らからは惜しむ声があがっている。(板東和正)
関係者によると、昨年12月に同温泉の玄関に改装の張り紙が張ってあったが、今月入って温泉の近隣の住民に「解体工事のお知らせ」が配布された。工事期間は今月16日から5月15日までと記されいる。
美章園温泉は鉄筋コンクリート2階建てで、昭和8年に建てられ、現在、文化庁の登録有形文化財に指定。壁面などにアール・デコの装飾を採用したり、屋根をドーム型にするなど、当時の建築の流行を取り入れた歴史的な建築として評価されている。
戦後、経営難のため競売にかけられたが、この温泉にほれ込んでいた経営者が買い取って銭湯は続いていた。ミヤコ蝶々さん、南都雄二さん夫妻が新婚時代に利用した、有名なエピソードもある。
突然の取り壊しが決まってからは、地元住民からも惜しむ声が上がり始めている。
正面で薬局を営む吉村武文さん(80)は「町のシンボルがなくなるのは悲しいが、時代の流れなので仕方ないが、できれば保存してほしい」。近くに住む販売業、福田恵さん(35)は「小さいころから入っていたこの温泉は私にとって大切な場所。所有者の方には『今まで続けてくれてありがとう』と感謝の言葉を伝えたい。原油高なども追い打ちとなって銭湯はどこも経営難で窮地に立たされているのだろう」と話している。
『窓から読みとく近代建築』などの著書のある大阪歴史博物館の酒井一光さんの話「古いという貴重さに加え、多彩なデザインを取り入れた名建築としても価値が高い。長年、地域の象徴としても親しまれており、あれだけの銭湯は、全国的にみてもそうないだろう。もし取り壊されるなら残念だ」