奈良県の志賀直哉の旧邸が当初の形に復元、公開されるそうです。毎日新聞では保存運動をしていた方のコメントも掲載されています。
志賀直哉邸復元へ 奈良市高畑町
MSN産経ニュース:2008/10/4
小説「暗夜行路」で知られる文豪、志賀直哉(明治16〜昭和46年)が暮らした奈良市高畑町の旧居(登録有形文化財、昭和3年築)について、所有者の奈良学園(同市)は4日、直哉自身が設計したとされる当初の姿に復元する方針を明らかにした。公開部分も広げる予定で、直哉の美意識が伝わる邸宅が来春以降に全面的に見学できそうだ。
直哉は昭和4〜13年にこの邸宅に住んで執筆活動に取り組み、「暗夜行路」も完結させた。武者小路実篤ら白樺派の文人、画家らが集まり、「高畑サロン」とも呼ばれた。旧居は木造2階建て延べ約410平方メートル。数寄屋造りが基調だが、洋風の娯楽室やサンルームも取り入れている。直哉が暮らした後は旧厚生省の宿泊施設などに使われ、模様替えが繰り返されてきた。
呉谷充利・相愛大教授(建築・文学)が当時の写真をもとに調査した結果、現在の邸宅を囲む漆喰(しっくい)塗りの塀はもとはひなびた土塀だったことを確認。2つの子供部屋を仕切る壁に窓が存在したことや、サンルームの鴨居(かもい)の高さなどが変更されていることも分かった。復元工事では、できるだけ当初の姿に近づけ、直哉の時代の雰囲気を味わえるようにするという。
志賀直哉旧居:復活「悲願かなった気分だ」--奈良で記念シンポ
毎日新聞:2008/10/5
完成当時の姿に改修されることが決まった志賀直哉旧居(奈良市高畑町)。来春にも、志賀の思い出が詰まった建物の内部が全面公開されることも決まった。解体の危機を乗り越えて30年。保存運動にかかわった人たちは「悲願がかなった気分だ」と感慨深そうだった。
記念のシンポジウムは4日、奈良市内で開かれた。旧居の隣に住み、志賀と家族ぐるみで付き合った洋画家の中村一雄さん(73)らがエピソードを語った。中村さんは保存活動の中心メンバーで、解体に反対する約3万2000人分の署名を持って上京し、旧居を所有していた厚生省(当時)に要望した思い出を振り返った。
奈良学園が買い取った後も、老朽化のため、一般客は建物の外から内部をのぞき、「サンルーム」に入れるだけだった。中村さんは「全面的に公開してこそ価値がある。志賀直哉が住んでいたころのように、多くの人が集まる場所になったらいい」と笑顔を見せた。
シンポジウムの後、旧居を調査した呉谷充利・相愛大教授(建築学、文学)は、現在は扉になっている場所が元々は壁だったことや、壁に窓があったことを説明。家を囲むしっくいの塀も、当初は土を固めた築地塀だったといい、呉谷教授は「志賀の美意識や感覚を知る上で本来の姿を知ることはとても重要だ」と話した。