熊本市で解体の決まった遊郭「日本亭」が公開されたそうです。読売新聞が伝えています。記事によると、この保存活動に取り組む地元住民らが企画したものだとのこと。
二本木遊郭往時しのぶ
読売新聞:2008.08.18
旧日本亭初の一般公開
明治から昭和初期にかけて九州有数の遊郭街として栄えた熊本市二本木地区で17日、唯一現存する旧遊郭「日本(にほん)亭」が初めて一般公開された。築後110年の建物は老朽化に伴う解体が予定されており、保存活動に取り組む地元住民らが、貴重な歴史遺産を多くの人に見てもらおうと企画した。
二本木地区には最盛期、「東雲(しののめ)楼」など約70の遊郭が軒を連ね、約800人の遊女がいたとされる。
日本亭は、米相場で財をなし東雲楼などを経営した相場師中島茂七が1896年(明治29年)に建設。木造3階建てで、1階に「張り見世」と呼ばれる遊女が並んで客を出迎えた部屋や帳場、台所、風呂場などが、2、3階に客室や宴会場などがあった。1975年の火災で3階部分は焼失し、現在は2階建てとなっている。
58年の売春防止法施行後、間借りアパートに姿を変えたが、老朽化で維持管理が難しくなったため所有者が解体を決め、5月に最後の住民が退去した。
8月に解体予定だったが、地元住民有志が「保存して地域活性化に役立てられないか」と所有者に持ちかけ、まずは多くの人に関心を持ってもらおうと、一般公開への準備を進めてきた。
建物内には、朱色に塗られた渡り廊下や階段の手すりが残り、往時をしのばせる。この日は市内外から多くの人が訪れ、地元住民がボランティアで中を案内した。熊本市国府から訪れた公務員男性(48)は「長年の傷みと改装で本来の姿が損なわれている部分もある。できるだけ当時の姿に戻して保存してほしい」と話した。
九州大大学院芸術工学研究院の藤原恵洋教授(近代建築史)は「舟や水にまつわる意匠が多い遊郭の特徴をとどめた、全国でも有数の貴重な建築物。保存修復して往時の姿を取り戻せば文化財としての価値は大きい」と話した。
一般公開を企画した住民有志の一人で、二本木遊郭を題材にした作品を手がけている画家の古場田博さん(59)は「多くの人に見てもらい保存への機運を盛り上げたい」と話していた。