以前お伝えした仙台政府倉庫の再開発ですが、いよいよ取り壊しにはいるようです。市民団体
まち遺産ネット仙台が要望書を市に提出するなど保存・活用を求める動きもあるようです。
旧・仙台政府倉庫:来週にも解体工事開始 70年間、米備蓄で重要な役割 /宮城
毎日新聞:2008年5月21日
昭和初期から約70年間、米の備蓄倉庫として重要な役割を果たした旧仙台政府倉庫(仙台市宮城野区新田2)に関し、同市は来週にも解体工事を開始することを決めた。青葉区川内の追廻(おいまわし)地区住民が集団移転する市営住宅建設のためだが、歴史的建造物の解体を惜しむ声も出ている。19日には市民団体が、工事延期や部分保存を求める要望書を市に提出。ギリギリまで再考を求める姿勢を見せている。【鈴木一也】
◇跡地は市営住宅建設--追廻地区住民が集団移転
旧政府倉庫は1936(昭和11)年、米価の乱高下抑制を目的に市が建設し、国に寄付した。約1万1700平方メートルの敷地に、三角屋根の木造平屋建て倉庫12棟が向かい合って並んでいる。04年の新潟県中越地震の際も被災地に非常食を供給するなどしたが、老朽化のため05年3月に運営停止となった。
集団移転する追廻地区の住宅は、戦争被災者や中国からの引き揚げ者向けに終戦直後に建設された。青葉山公園の整備計画に伴い、市が96年に住民に移転を求めたが、交渉が長期化。旧政府倉庫の土地に集団移転することでようやく合意し、市が今年3月に国から土地建物を買い取り、解体準備を進めてきた。
◇歴史的建物、惜しむ声--市民団体が保存・活用求め要望書
移転問題が10年以上の歳月を経て前進した一方、「歴史のシンボル」としての価値をどう評価するかが、新たな問題となった。
仙台市内の歴史的遺産の保存・活用方法などを考える市民団体「まち遺産ネット仙台」(西大立目祥子代表)は今月1日、旧政府倉庫の一部保存・活用を求める要望書を市に提出。12棟中9棟を残し、市営住宅とともに市民広場や資料館などとして活用する案を提示した。
市青葉山公園整備室は「解体は以前から決まっていたことで、業者とも既に契約済み。追廻地区住民とも長い交渉の末ようやく合意したので、計画変更は不可能」と説明。まち遺産ネットの「見学会のために倉庫を一般開放してほしい」との要望には応え、敷地内への立ち入りを許可した。
許可を受けて、まち遺産ネットは15、16の両日、旧政府倉庫の見学会を開催。一般参加者約180人に配布したアンケートで146人から回答があり、ほぼ全員が「全面保存」か「部分保存」を希望したことなどから、再考を求める要望書を改めて19日に市に提出した。工事開始前の回答を求めている。
まち遺産ネットのメンバーで、東北文化学園大人間環境デザイン学科の大沼正寛准教授は「戦前・戦後の農業政策の重要な史料であると同時に、建築的にも日本古来の方式と西欧の近代手法が折衷されており、価値が高い」と指摘。西大立目代表は「倉庫内の巨大な空間を観光施設などに活用する例も全国に多くある。追廻地区の方々が移転してきても、一部は残して児童館などに活用できるのでは」と話している。