金沢兼六園内の三芳庵・別荘が老朽化のため取り壊されるそうです。中日新聞が伝えています。記事によると築後130年程度の物件で、芥川龍之介が泊まり絶賛したこともあるというもの。移築などの道はないのでしょうか。
三芳庵『別荘』取り壊しへ 築130年以上? 龍之介も宿泊
中日新聞:2008年6月1日
兼六園 老朽化で危険に
国の特別名勝「兼六園」内にあり、八十数年前に作家芥川龍之介が泊まり絶賛した三芳庵(みよしあん)「別荘」が、老朽化から今月二十日で営業をやめ、取り壊されることになった。
別荘は、瓢(ひさご)池に落ちる翠(みどり)滝上の高台に位置。三芳庵「本館」、同池端の「水亭(すいてい)」とともに経営する有限会社「瓢」の新蔵實代表(72)は「藩主来園の際の見張り台として建てられたらしく、百三十年以上前の建築では」と推測する。
一八七四(明治七)年の「兼六園」開放の翌年から茶屋として営業。一九二四(大正十三)年五月、金沢の室生犀星を訪ねた芥川は犀星の計らいで四泊し「樹間に瓢池を臨み、茶室の外には滝のある次第、風流おん察し下され度候」と友人に書き送った。
広さ約三百九十五平方メートルの敷地に、木造平屋瓦ぶき数寄屋造りの別荘約百八十二平方メートル。明治期に三度ほど修理され、一九五四(昭和二十九)年の洞爺丸台風の際は、倒木で建物南側の茶室が倒壊し座敷に改修された。
二〇〇七年の能登半島地震などで土台ががたつきだし、危険なため取り壊しを決めた。
三十一日、金沢市室生犀星記念館(笠森勇館長)の文学散歩で訪れた文学ファンらに、新蔵代表が取り壊しを伝えた。「大事な文学遺産をもったいない」「このまま移築して保存できないか」と惜しむ声が聞かれた。
七月十日ごろには取り壊しを終えて更地とし、跡地は国へ戻される。