先日お伝えした学習院大学のピラミッド校舎見学会へ参加してきました。非常にたくさんの方が来ており、この建物への関心の高さを感じました。
「ウルトラセブン」上映会は14時の会に参加しましたが、今後の計画については老朽化に伴い新校舎に建て替える旨が簡単に説明されたのみで、大学側からほとんど説明はありませんでした。満田監督を迎えた上映会は非常に和気藹々とした雰囲気で、ウルトラセブンがピラ校を壊してしまうシーンではどよめきと笑い声が。
立ち去りがたく、上映会終了後もしばらく写真を撮っていたのですが、来場者がこの校舎の思い出を口々に語り合っておられたのが印象に残りました。
(撮影した写真は下の「More」をクリックしてご覧下さい)
目白寄りの西門ではなく、正門から入ってみました。ピラ校の竣工当時は西門は無かったそうで、ほとんどの学生は正門から入っていきました。門柱の「学習院」の文字も立派です。
正門からは木立の中を抜けていきます。途中には大学資料館(1909年竣工、久留正道設計)があります。久留は芸大の奏楽堂など明治期の学校建築を多く手がけています。
次に見えてくるのは大学図書館。これも前川の作品です(1963年竣工)。中には入れませんでしたが、正方形の各ボリュームをフリースペースで繋いだ前川らしいプランのようです。
さらに進んでいくと、いよいよ中央校舎を中心とした校舎群(1960年竣工)が現れます。始めに見えるのは「北1号館」。「学問のコア」であるピラ校への導入部分として「門」の役割を果たします。開口部がとてもリズミカルです。
北1号館のピロティをくぐり抜けていくとピラ校こと「中央校舎」が現れます。突如、意外な造形が現れてびっくりします。この形は教壇からの音響を考えてのものだそうです。教壇は南東にあるので、ピラミッドの頂点は北西に寄っています。
ピラ校に入る前に、もう少し北1号館を見てみることにしましょう。正門側は「門」の部分を除いて寡黙ですが…
中央校舎側は回廊になっています。竣工当時、ピラ校の西隣には同スケールの低層の建物「本部棟」が作られ、大学事務機能が置かれていました。
展示されていたパネルから、竣工当時の写真です。これを見ると、プランの意図がよく分かります。ピラ校と本部棟を中心として全体がゆるやかに関連しています。
北1号館の上部には屋上庭園があるはずだったのですが…現在は閉鎖されていました。屋上へ上る階段です。コルビュジエのユニテを連想してしまいます。
それでは、いよいよピラ校へ…入る前にもう少し、周りを巡ってみましょう。
奥に見える建物も前川国男の作品です。理学部専用の「南2号館」です。
別のアングルから。屋上の給水塔もコルビュジエ風です。登りたいなあ。
こんな階段があったりもします。円柱の中はダクトスペースになっていました。
いよいよ、ピラ校の内部へ入っていきます。まずは回廊から。
回廊というか、ほとんど「構造の隙間」という感じですが、ピラ校の周りの池から光が反射して、意外に明るい空間になっています。
内部の座席を支える円柱。床面は北1号棟と同じパターンになっているのがわかります。
こちらの回廊では、ピラ校に関するパネル展示をしていました。夏頃には、また展覧会をするそうです。全て、取り壊し前提での予定なのが悲しいですが…本当にどうにもならないのでしょうか。
いよいよ、内部へ入ります。上映会を前にして、すでに寿司付め状態。なんとか通路に陣取りました。
まず、大学事務局の方が挨拶をされました。ピラ校もあまり使われなくなり…と建物が役割を終えたように仰っていました。使わないから使われなくなるのですが…。
続いて「ウルトラセブン」第29話の監督、満田さんが壇上に。円谷一が学習院の卒業生だったことから、学習院での撮影となったそうです。
上映会が始まりました。いきなりピラ校のアップからはじまります。会場からはどよめきが。
画面が暗いのでパネルで代用します。プロテ星人と格闘するウルトラセブンは、このシーンの直後、空振りしてピラ校を押しつぶしてしまいます。会場からは笑い声が。自分が今いる建物が壊されているのは可笑しいものです。しかも、この建物が壊されるのが残念だから、みんな集まっているのに…。
上映会の後は満田監督とのQ&Aがあり、ほのぼのした雰囲気で終わりました。取り壊し反対という年配の方がおられましたが、大学側からは何もコメントはありませんでした。
上映会終了後、壇上に登ってみました。
特徴的な円形の照明も綺麗に見渡せます。前川建築の照明ってなかなか良い物がありますよね。
椅子のアップです。足下に温水管が通っています。暖房がいまだにこれというのは、凄い。
床は木レンガです。長年踏みしめられて木口が真っ黒になっています。
壇上から見えた、放送室へ入ってみました。機材などはもう無いようです。窓が少し不規則になっているのがかわいい。
放送室の小窓から、壇上を見てみます。照明の吊り方なども分かりました。
高い所から、もう一枚。教壇を反射板(というのかな?)が囲んでいる様子が分かるでしょうか。
ディテールは他にもたくさん撮ったのですが、この辺にしておいて、もう一度外に出ることにします。
さっきは気づきませんでしたが、教壇の裏側辺りに入口らしきものが。
楽屋口のようです。皆さん入っていくので、ついて行ってみます。
ピラ校の大きさに比べ思いのほか狭い楽屋の中は落書きでいっぱいでした。大学祭やイベントの記念に思い思いのことを書いたのでしょう。
狭い楽屋で記念撮影をする人達。ピラ校で起こった出来事を全て、見守ってきた小部屋。そう思うと胸が熱くなりました。
私はこの学習院で学んだわけではありませんが、いつのまにか自分の大学生活を思い出していました。それぞれの思い出が刻まれているキャンパス。そう簡単に失ってしまってよいのでしょうか。すぐには立ち去りがたいのか、上映会終了後も多くの方が随分長い時間残って、この校舎を眺めていました。