東京中央郵便局舎の工事入札、実施へ |
東京中央郵便局舎 再開発あす入札 昭和遺産行方は?
東京新聞:2008/10/02
文化的価値の保護か、収益性優先かで揺れる東京中央郵便局舎(東京都千代田区)の再開発事業の工事入札が三日、行われる。同局舎はモダニズム建築の傑作だが、日本郵政は採算を重視し、保存を最低限にとどめる意向。入札後に保存を訴える旧郵政省OBらの反発が強まる可能性もある。 (越守丈太郎)
計画では、日本郵政は現局舎の跡地に地上三十八階、地下四階のタワー型ビル(高さ約二百メートル)を建設し、オフィスや商業施設などとして貸し出す。
入札のルール上、具体的な建築計画は明らかにされていないが当初、日本郵政は「外壁だけでなく現建物の構造体を含めて保存、復元し後世に伝えたい」と説明。しかし、七月に開かれた千代田区の審議会では「全体の保存は事業性が成り立たないためできない」との見解を示した。
旧郵政省出身で、同局舎の保存運動を続ける芝浦工大の南一誠教授は「局舎を日本郵政だけで維持できないなら、公的支援も得て残せるよう皆で協力しようと言っている。事業を邪魔するつもりはない」と話す。
局舎が重要文化財指定の検討に値するとしている文化庁も「一般的に建築物は外観だけでなく構造体も残らねば、文化的価値を失う。議論がないまま局舎が取り壊されるのは残念だ」という。
他方、民営化後も文化的財産の保護に努める企業も。NTTは旧京都中央電話局西陣分局舎(現NTT西日本西陣別館事務棟)など大正時代以降の建築物を保存。約五百億円をかけて東京駅の復元工事を進めるJR東日本も「文化遺産として歴史的建造物を未来に継承したい」と保存の意義を強調する。
あくまで私見ですが、東京中央郵便局はモダニズムを先導してきた郵政(逓信省)建築の傑作のひとつであると同時に、その機能を現代に照らした場合、いわば配送センターを東京駅の真ん前に置いている、という著しく非効率な状況にあることは明白で、現状のままでの維持・保存は困難と考えます。
確かに、記事中にあるように、空中権を売却した東京駅のような保存の仕方は可能ですが、現状のままの機能であることが、日本郵政にとって、ひいてはそのステークホルダー(利用者も含む)にとって、良いこととは思われません。改変・改築、あるいは部分保存といった解決策が妥当なのではないでしょうか。
本当に素晴らしい建築は時代の移り変わりと共に新しい命を吹き込まれ愛され続ける物だと考えています。東京中央郵便局もまた、単なる保存でも再開発でもなく、新たな命を吹き込まれるべき時期にあるのではないでしょうか。また、このような困難なプロジェクトの実現を通して、かつて時代をリードし続けてきた郵政(逓信省)建築の、現代の力を見せつけて欲しいと願わずにはいられません。