ソウル市庁舎(岩井長三郎設計、1926年竣工)をめぐり、解体を行うソウル市と保存を求める文化財庁の意見が食い違い、工事が中断しているとのこと。日本占領当時の建築物をめぐる問題が顕著にあらわれた事例だと思います。果たして「文化財」とは、あるいは「歴史」とは、誰にとって残されるべきものなのでしょうか。
ソウル市庁舎、解体か保存か 市と文化財庁が対立
中日新聞:2008.09.01
日本の植民地支配下に建てられたソウル市庁舎本館をめぐり、解体復元工事を進めるソウル市と、原形保存を主張する文化財庁が対立している。
市庁舎本館は、1926年に京城府庁として完成したルネサンス様式の鉄筋コンクリート地下1階、地上3階建て。市登録文化財だが老朽化が進み、市は2011年の新庁舎完成とともに、本館は解体後に復元して図書館とする計画を立てた。
文化財庁は、市の計画では文化財の価値を失うとして、主な部分を原形保存するよう勧告。市は「中央ホールなどは最大限原形保存する」と計画を一部変更したが、8月26日に工事を強行。
文化財庁は対抗策として同日の文化財委員会で国の史跡に仮指定し、工事続行が文化財保護法違反の「文化財破壊」になるとして即日中断させた。
市は補修・補強を重ねており、「史跡としての価値はない」と主張。仮指定取り消しの行政訴訟も辞さない構えを見せている。